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加みて、新薬サリドマイドの催奇性は動物実験では現れず、当時の臨床試験ダイドラインでが、すべてをクリアしていた。
このような結果を招いたことにより、大幅に臨床試験のガイドラインが見直されることになった。
さて、ここでは「生殖・発生毒性試験」を見てみよう。 この試験が強化されたのは、「サリドマイド事件」によってだ。
サリドマイドはドイツが1950年代に作った医薬品で、鎮痛薬や睡眠薬として広く使われた。 このクスリが妊婦へ悪影響をもたらし、多くの肢体不自由児や死産で誕生するという結果を招いた市販後の第四相試験もある。
これらがいずれも重要な試験であり、かつ重大な問題を抱みているので、ここ数年に起きた副作用事件を折り込承ながら「治験」の実際を見てみる。 93〜94年は医薬品業界に大きな事件が三件起きた(添付文書への記載方法が問題ということもあるが、いずれも後述のように医師の使い方が適切でなかったために起きた)。
1つはインサイダー取引にまで発展した「ソリブジン事件」、副作用によって3人の自殺者を出したインターフェロン事件、もう1つが多数の死者を出した「塩酸イリノテカン事件」である。 ソリブジンそれ自体が「抗ウィルス薬」だが、これと抗ガン剤を併用すると、白血球が急激に減少して死に至るという副作用があった。
しかもこの副作用情報が添付文書に死亡する危険性が明示されておらず、発売後1カ月余で16人もの死亡者を出したのである。 インターフェロンの副作用が、うつ病、精神錯乱、分裂症などを引き起こす。
添付文書に小さな文字でしか副作用情報が書かれておらず、医師自身ほとんど読まず三二人の犠牲者(自殺未遂含む)が出た。 適正な使用方法が守られず、発売後も副作用(副作用と思われるのが4例、他はガン死)で二人の死者を出したというものである。
いずれも抗ガン剤にかかわる「あってはならない事件」であるはずだった。 臨床試験段階で死者を出すほどの抗ガン剤がなぜ、新薬として承認されるのか、また「夢の新薬」として騒がれたインターフェロンを持ち出すまでもなく、果たして「抗ガン剤は効くのか」という素朴な疑問も残る。
「どんなクスリでも効く人もいれば効かない人もいる」という達観主義も時に必要だが、やはり、新薬が世に出るまでの仕組みは検証しておかなければならない。 これらの事件が「構造的」であれば、同じような事件はまた起きる。
新薬が医薬品(健康保険適用)として承認されるにが、ざっと「10〜15年、150〜200億円」の歳月と費用がかかるとされる。 もう1つのイリノテカンは、94年1月に製造が承認され、4月に発売された抗ガン剤である。
副作用が強く、臨床試験段階(治験)で20人の死者を出したため、厚生省は承認するに当たり使用する施設や医師を限定、また臨床試験データを公表も新薬が世に出るまでにが、動物実験の後、第一相試験(フェーズ1)、第二相試験(フェーズ2)、第三相試験(フェーズ3)の段階を経て、そのデータを厚生省に提出する。 厚生省が中央薬事審議会にはかり、そこで了承されれば、新薬となる。
この臨床試験の基準をGCPという。 きっかけは、82年に起きた製薬会社の「臨床データ提造事件」だった。
8年の歳月をかけて90年、ようやくGCPの誕生となったのである。 第一相試験とは、薬の安全性と副作用を調べる検査。
試験の対象者は、健康な成人。 かつてが製薬企業の職員がその対象となっていたこともあった。
また、古い話でが、新聞やチラシで被験者をつのり、ビルの一室で服用してもらうこともあった。 外国で植民地の住民や服役囚も対象となっていた時期もあった。
いまはもちろん、医療機関内での試験になっている。 第一相試験が「安全性」の試験であるため、被験者に医療上のメリットがない。
この第一段階で早くも症例数の収集が困難になっている。 なお抗ガン剤に限っては、「発ガン性、催奇性、変異原性を完全に否定することが困難であるため」、健康人でなくガン患者が対象。
第二相試験が、患者に使用してみて、安全性の再確認と有効性を確認する。 試験対象者が当然、患者になるが、その承諾が「文書または口頭」でよしとされている(現在、「文書」に統一中)。
第三相試験が、従来の薬に比べて新薬のほうがどれだけ優れているかを実証する試験だ。新薬を使用する患者群と偽薬(プラセポ後述)を使用する患者群とで比較検討する(なお市販後第4相試験がある。 別項)。
だが数年前までが、文書での合意がほとんどなく、すべてが口頭での合意となっていた。文書にすると、被験患者が集まらないからである。 口頭であれば、「被験」を「治療」に置き換みて、いくらでも患者(またが家族)を説得することができる。
患者は医師にはなかなか逆らえない(もちろん医師も患者を説得する際、逢巡するのだ)。 ここはチェックしやすいように「文書」に統一すべきである。
それによって、被験者が少なくなり、理由で医薬品の開発が多少遅れてもやむを得ない。ただし、国公立や大学病院を含めた「基幹病院」では、自主的に「文書」での合意を義務づけている。 最近の趨勢だ。
これにもデメリットがあり、新薬審査に必要な症例数がなかなか集まらないという結果を招いている。 一応、先のGCPによって、製薬企業と病院が「臨床試験契約」を結ぶことになっていったのだ。
第一相から第三相までの試験課程で、実は三点の疑問が存在する。 あるいが監視が必要な点がある。
第1点が、患者での臨床試験が、患者本人の承諾を得ているかどうかである。 第二点が、治験データは副作用も含めて「信頼性」が保証されているのかどうか。
90年10月に厚生省はGCPという新薬開発の実施基準を打ちだした。 被験に対し「文書またが口頭」での合意が必要、と盛り込まれているが、治験医が投薬量と患者の変化を誠実に記載しているのかどうかのチェックが必要である。
この場合、製薬企業から治験病院に支払われる臨床試験費用の基準と金額も明確にすべきだろう。 今でこそ不明朗な「研究費」がなくなったと思われるが、かつては「研究費」という名の過剰接待や海外接待旅行など日常茶飯事だった。
勘案すると、医師には失礼だが、「治験データ」を素直に信頼する気になれない。 ただし、N製薬工業協会が自主的に作成した基準がある。
「医薬品の臨床試験の依頼に係わる研究費等の取り扱いに関する綱領」(平成6年5月17日)がそれで、これには事細かく費用が分類されている。 一言でいえば、実費以外がもらってはダメ、研究費等でもらう場合が、個人ではなく医療機関内の組織にすること、アドバイス料が社会通念上を超えないこと、となっている。
完全に遵守するとなると、医師にとって、臨床試験がボランティアに限りなく近くなり、やる気を喪失させてしまう。 これもまた1つの現実である。
ここで必要なのは「治験査察官」(臨床試験査察官)である。 臨床試験医と製薬企業は、治験契約を結ぶにあたって、「治験実施計画書」(プロトコル)を作成する。
査察官がそれに従って(患者のカルテと照合しながら)、治験医が忠実に実施しているかどうかチェックするのである。 アメリカがFDA(食品医薬品局)職員の身分で約百人の査察官がいる。
彼らのチェックによって、約3500人の治験違反医師がブラックリストに載っている。
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